私は慌てて、ハーヴェイの側へ駆け寄る。

いったいどうしたんだろう。
悪い予想ばかりが頭を過ぎる。

不安でいっぱいな私は、膝をついてしゃがみこむと、
ハーヴェイの様子を近くから伺った。

【ハーヴェイ】
「…………」

【瑠奈】
「……あ、あれ？」

近くにくると、ハーヴェイから気持ちよさそうな
寝息が聞こえてくる。

【瑠奈】
「……これってただ寝てるだけ……？」

その事実を前に、緊張していた私の身体から、
一気に力が抜けていく。

冷静になってよく周りを確認したら、ベットから
シーツがずり落ちていて、枕も転がっていた。

状況から見て先程聞こえた物音は、ハーヴェイが
寝ぼけてベットから落ちただけ……

【瑠奈】
「ひ……人騒がせなんだから、もう」

安心して、ほっと一息ついていると、視界の中で
ハーヴェイの格好が鮮明に映し出された。

【瑠奈】
「（……なんで上半身が、はっ、裸なんだろう）」

かあーっと顔に熱が集まるのを感じる。

慌てて顔を背けるけど、
なかなか心臓は大人しくなってくれない。

【瑠奈】
「と、とにかく起こさなくちゃ……」

私は顔を背けたまま、声をかける。

【瑠奈】
「ハ、ハーヴェイ？　その、もう陽が昇ってますよ？
ええっと、ジェラルドさんが執務室で待ってる
みたいですから、そろそろ起きたほうが……」

【ハーヴェイ】
「…………」

反応、なし。
何度か名前を呼んでみるが、やはり結果は同じだ。

【瑠奈】
「（……仕方ない！）」

私は意を決して、逸らしていた視線を、ハーヴェイ
へと戻した。

途端に収まりつつあった顔がまた熱を帯びたけど、
ともかく彼を起こすことに全力を尽くそうと思う。

私はハーヴェイの耳元に近寄るよう、身体を屈めた。
さすがに至近距離で呼ばれたら起きるだろう。

すうっと息を吸って、吐き出すのと同時に、大きな
声で名前を呼ぼうとした。

だがそれを実行する直前、私に向かってハーヴェイ
の腕が伸びてくる。

【瑠奈】
「わっ？！　ちょっ、ええっ？！」

気づいたら、私はハーヴェイに抱き締められていた。

【瑠奈】
「あっ、あの、ハーヴェイ？！」

ハーヴェイの素肌の感触を頬に感じて、
頭の中が混乱する。